「僕らが引っ張っていく気持ちを持たないと」
6月13日に29歳の誕生日を迎えた偉大な先輩は、22歳になったばかりの2008年6月のバーレーン戦(埼玉)で初キャップを踏み、ここまでの7年間で代表74試合29得点という数字を残している。
ただ、23歳になったばかりの宇佐美がここからコンスタントにレギュラーに定着し、頭抜けたシュート技術と得点感覚を駆使してゴールを重ねていけば、そこを超えられる可能性はある。
「貴史は無敵じゃないですかね。効果的なスプリント回数も増えてるし、おとりになる動きも出てきてるし、パスも出せるし、ミドルも打てるし、もう止めようがない」とガンバ大阪の先輩・今野泰幸に言わしめた通り、彼はそこまでの領域に達するだけの十分なポテンシャルを備えているのだ。
それだけに、若き怪物には、シンガポール戦で代表2点目となるゴールを確実に奪ってほしい。
「得点を作り出すプレーもアシストもそうなんですけど、やっぱりゴールを取りたいなっていうのはある。チームの攻撃がスムーズに進むように、セットプレーになるようなプレーを意識しながら、後ろから絡んでいくプレーができればいいなと思います。
自分はもう23ですし、岳や武藤(嘉紀=FC東京)もそうだけど、僕らの世代がもっと出てこないといけない。上の世代に頼ってばかりではいられないんで。
僕らが引っ張っていく気持ちを持たないと、チームを底上げすることもできないと思うんで。よりアグレッシブに質の高いプレーをすれば、さらによくなっていくんじゃないかと思います」と宇佐美自身も自分に課せられた役割をよく理解しているようだ。
ずっと先を行く本田も「若い時に感じていた成り上がり精神みたいなものを捨てずに、1試合に懸ける思い、絶対に勝つんだと、何があっても勝つんだという気持ちをもっと強く、この歳ながらに持っていきたい」と強調していた。だからこそ、若きアタッカーはそれ以上の成り上がり精神を強く押し出していくべきだ。
宇佐美のW杯予選初ゴールが、ロシアへの道を切り開く大きな弾みとなる。その一撃を多くの人々が待ち望んでいる。
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