「自分に合うプレーをしつつ、チームに貢献できればいい」
タッチライン際のアップダウンを無尽蔵にこなせる長友や酒井高徳に比べると、酒井宏樹は高さ、守備面で相手を跳ね返せる強さがある。攻撃参加も周囲との連携を大事にしながら上がっていくタイプで、攻守のバランスは一番取れているかもしれない。
「僕は高徳や篤人君と同じようなプレーはできない。自分に合うプレーをしつつ、チームに貢献できればいいと思います。監督から求められていることはポジショニングだったり、と不用意なファウルをしないとか、セットプレーで中に入るのでマークの確認とか、サイドバックにとって基本的なことですね。
今は篤人君がケガで外れてるから試合に出れるチャンスを得てる感じですけど、その間に盗めることは盗んで経験して、次のステージに行かないと(篤人君には)追いつけないレベルだと思う。頑張っていきたいです」と宏樹はポスト内田の一番手に名乗りを挙げるべく、必死のアプローチを続けている。
内田の壁をひしひしと感じていたのは、高徳も同じ。アジアカップ期間中に「内田との違い」を繰り返し問われた彼は「僕は内田篤人でもないし、彼にはなれない。全く違った役割をこなしていくしかない」と感情を露わにするシーンも場面もあった。
内田という日本人屈指の国際経験を誇るスピードスター、そして、いつ何時でも右にシフトできる長友という抜きんでた存在は、2人の酒井にとっては紛れもなく高いハードルに他ならない。
とはいえ、宏樹は今、その牙城に割って入る絶好のチャンスに直面している。2011年FIFAクラブW杯でサントス相手に大暴れし、「日本のダニエウ・アウベス(バルセロナ)」と評された男はシンガポール戦でもスタメンの座を手にし、巻き返しに弾みをつけるのか。その動向に注目したい。
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