終盤には復調。2度目の別れも変わらぬ愛情
後半戦に入ると、香川も先発の座を取り戻し、チームとともに徐々に復調の兆しを見せたが、3月に入ると再び失速してしまう。ハンブルク、ケルンに勝ち切れず、4月にはバイエルン、ボルシアMGといった上位陣に勝つことができない。そして自らの限界を悟ったクロップは、辞任を表明する。
突然の知らせだったが、香川のクロップへの信は揺らがなかった。
「チームもこういう状況だったので、その決断は監督が決めたことだから、しっかりと尊重する」
香川は、クロップへの感謝の気持ちを表した。
「もちろん僕が移籍してきて、使ってくれて、ヨーロッパで優勝出来て、色々な経験をさせてくれた。それは本当に感謝の気持ちで一杯ですから、しっかり最後はいい形で締めて終わりにしたいです」
クロップが辞任を表明した後、じわじわとドルトムントは順位を上げて、ヨーロッパリーグ出場権の獲得となる7位に辿り着いた。香川もパーダーボルン戦、フランクフルト戦に続き、最終戦のブレーメン戦では、1ゴール2アシストと、かつてのような輝きを放った。
そして迎えたポカール決勝の前日記者会見でのこと――。
クロップは香川の先発を明言した。
「カガワのような才能ある選手がずっと鳴りを潜めたままなんてことはありえない。決勝を前に、再び輝きを見せ始めてくれて嬉しい。彼の勢いを止めるつもりはない」
2015年5月30日のポカール決勝をボルフスブルクに敗れて、ドルトムントでのクロップの時代は終わった。しかしそれは、クロップと香川の師弟関係の終わりを意味するのだろうか。
この5年間を振り返れば、ドルトムントを後にするクロップが世界中どこのクラブに行ったとしても、香川に対する愛情は変わらないだろう。2人の間柄は、この先も続いていくはずだ。クロップと香川が紡いだ月日は、フットボールの世界でも稀に見る、何にも代え難いものだった。
【了】