求められる高いレベルでの政治力
2002年の屈辱を忘れてはいけない。当時のアベランジェ会長を味方につけていた日本だったが、韓国は鄭夢準(チョン・モンジュン)氏が強腕で欧州の票を取り付け、共催に持ち込まれた。
もちろん卑劣な手を使っていいわけではない。今回の“FIFA危機”のように悪行には必ず制裁が下る。田嶋氏がFIFA理事になる決め手となったクリーンな手法を貫くべきだ。
日本はFIFA理事に入り込むため、ブータンやベトナムなど各国に指導者を派遣し価値を高めてきた。この活動は引き続き行ってアジアなどの票を固めつつ、理事となった田嶋氏がいち早く内部の情報をキャッチするとともに、欧州勢の理解を得なくてはならない。
小倉氏は理事時代、英語のほかにフランス語やスペイン語を駆使し、一筋縄ではいかない理事や各国協会関係者たちと関係性を築いていった。田嶋氏にも高い交渉力が求められる。
そして、ブラッター氏とも状況を見ながら距離をとっていくべきだろう。ブラッター氏の地盤を築いた『ゴールプログラム』で、日本にJヴィレッジメディカルセンターが作られるなど恩があるのも事実。だが、2022年をめぐる投票では日本に恩恵はなかった。
絶対権力のダークサイドが明らかになったことで、ブラッター氏にべったりでは票の確保は難しい。これまで以上にピッチ外でも上手い試合運びをしていかなくてはならない。“FIFA危機”を逆風ではなく追い風するための戦いは既に始まっている。
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