圧勝ではないブラッター。73票の重み
世界中から逆風が吹く中、ゼップ・ブラッター氏がFIFA(国際サッカー連盟)会長に再選した。29日に行われた会長選で、対抗馬であるヨルダンのアリ王子が73票を得たのに対し、ブラッター氏は133票を獲得。数字上は圧勝にも見える。
だが、今回の選挙は直前に収賄やマネーロンダリングなどでスイスとアメリカの両当局が捜査に乗り出し、幹部から逮捕者も出ている中で行われた。“どちらがふさわしいか”というよりも“ブラッター氏は適任か”という意味合いが強い。アリ王子には失礼だが、選挙というよりもブラッター氏への信任投票と言っていいだろう。
そう考えると、73票が『NO』だった意味は大きい。実に3分の1がブラッター氏を認めていないのだ。取り巻きの幹部が次々に起訴・逮捕される中、ブラッター氏は一貫して不関与を主張しているが、今後も厳しい追求が待っているのは間違いない。
73票がどこからもたらされたのか正確に割り出すことはできないが、欧州がほぼすべてアリ王子に投じたことは確実だ。一方で北中米カリブ海と南米、アフリカ、アジアはブラッター側に回った。
欧州が反ブラッターとなったことは、今後に大きな影響を及ぼす。ブラッター氏個人への追求はもちろんだが(今後情報を掴んだ関係者が懇意のメディアにリークすることは十分にあり得る。以前英紙のおとり取材もリークが発端と言われている)、サッカー界にとって重要なW杯開催地をめぐる争いで、欧州を捨てることはできない。
2026年大会を決める選挙から、現在の理事と会長のみのものから今回の会長選のように全加盟協会による投票と変わる。54票を持つ欧州は大票田だ。