定着しなかったシステム
マンチーニは就任早々、マッツァーリ監督が用いていた3バックシステムを放棄し、手慣れた4バックへと切り替えた。このアプローチ自体は間違ってはいない。マッツァーリの戦術理論は特殊であるし、最低でも3バックを用いる指導者でなければ踏襲は困難だ。チームに新しい刺激を与え、練習へのモチベーションを喚起するという意味でも、4バックに切り替えたこと自体は理にかなった行為だと言える。
もっとも、定着は難しかった。マンチーニはウイングやサイドハーフを用いたサッカーを志向し、4-2-3-1のシステムに変更しようと構想していたのだが、チームにウイングはいなかった。そこで彼はクラブに懇願し、1月にルーカス・ポドルスキとシェルダン・シャキリという2枚のウイングプレイヤーを獲得してもらう。しかしそれでも、4-2-3-1への移行はできなかった。他のポジションが成り立たないのだ。
ボランチ2枚のシステムを採用しても、それをこなせるMFもまたいなかった。ガリー・メデルはほぼ守備専門のアンカー、フレディ・グアリンも低めの位置で使うと良さが出ない。マンチーニはさらにクロアチア代表の天才マテオ・コバチッチをトップ下で使おうともしたが、これもまたうまく機能しなかった。
幸いにも1月に獲得したマルセロ・ブロゾビッチが好調だったため、結局中盤はブロゾビッチとグアリン、そしてメデルの3ボランチで固めることになる。しかし今度は前線がうまく機能せず、マンチーニはウイングを放棄しシャキリをトップ下で使うようになった。すると今度は守備が手付かずで、サイドバックにファン・ジェズスを回すなど修正はシーズン終盤まで続いた。
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