セリエA昇格を決めたカルピとフロジノーネ
今シーズンのセリエBでは、二つの快挙が起こった。カルピとフロジノーネが、ともにクラブ創立以来初めてとなるセリエA昇格を決めたのだ。
カルピは人口7万人、ホームスタジアムのサンドロ・カバッシの収容人数は4192人とセリエB最小という小規模クラブだ。ローマから90kmほど離れた人口4万6千人の小さな街を本拠地とするフロジノーネもまた、B残留を現実的な目標としていた。しかし戦力が揃っているセリエA降格組のボローニャやカターニアがもたつく中、彼らは開幕ダッシュに成功。後半戦にも勢いを落とさず、1位、2位を占めた。
そんな両クラブには共通項がある。経営もローコストで、高年俸を必要とするビッグネームは一切いなかったということだ。現代のプロサッカーにおいて、資金力がないことは致命的にも思える。しかし彼らの強さは、むしろそういう特質から生み出されたものだった。
過去ドイツW杯優勝メンバーのマルコ・マテラッツィも所属していたことがあるカルピだが、長らく3部から5部の間を行ったり来たりしていた。だが2011年からファッションブランド『ガウディ』を経営する地元出身の実業家ステファノ・ボナチーニが、友人3人とともにクラブの経営権を取得したことで運命が変わる。めきめきと実力をつけ、2013年にはクラブ史上初のセリエB昇格を果たした。
Bを戦うにあたって、当初彼らは資金を投じて補強も計った。だがその結果は中途半端な12位。そこでボナチーニは考えた。
「金を使ってもそれなりにしかならないのなら、若くてやる気のある選手を中心にチームを作ってみたほうがいい」――。
そして彼らは、経営の規模を拡大することなく、腕と工夫で勝負に出た。