打開策の1つは「ゴール前での余裕」
ただ、エースと呼ばれる人間は、単に身を粉にして働けばいいわけではない。今季チーム最多得点者である彼には、FC東京を勝利に導くゴールが誰よりも強く求められている。その重責を本人もよく理解している。
「やっぱり苦しい時こそ頑張れるか頑張れないかっていうのが選手の価値。今こそ真価が問われると思う。ここでひと踏ん張りして、チームとしても個人としてもいい結果を出せるようにしていきたいなと思います。
得点に関しては、運的な要素もありますしね。自分の悪いところ、コンディションがよくないところも多少、影響すると思いますけど、別に悪いプレーをしてるわけではないですし、チャンスも作れてるので、いかに最後のところで集中するか。
あとはボールが転がってくるか。そこを信じて走って行けるかってが大事なのかなと思います」と武藤は今がプロキャリアの大きな正念場だと捉え、真正面からそこに挑んでいく構えだ。
近い将来、彼がマインツに行くのか、他の欧州クラブに行くのかはまだ分からない。が、点取り屋たるもの、こうした苦境を乗り越えなければ成功をつかむことはできない。
マインツで2シーズン連続2ケタゴールを挙げた岡崎さえも、今季は9点目を奪ってから10点の大台に乗せるまでに10試合もかかっている。生みの苦しみを乗り越えてこそ、武藤も一回りも二回りもスケールアップできるのだ。この膠着状態からいかに抜け出すかを、彼は持てる全ての経験値を駆使して、模索しなければならないだろう。
1つの打開策として考えられるのが、ゴール前でアシストをする余裕を持つことだ。
「それは今、強く意識していること。頭の切り替えだけですぐできるような簡単なことではないので、継続して考えること、意識することが大事なのかなと思いますね」と本人も視野を広げようと躍起になっている。