得点から遠ざかるも献身性は失わず
今季J1開幕のガンバ大阪戦で2点を奪ったのを皮切りに、10試合で8得点とハイペースでゴールを量産してきた武藤嘉紀(FC東京)。その目覚ましい活躍と、3月中旬に届いたイングランドの名門・チェルシーからの正式オファーによって、彼の注目度は飛躍的にアップした。
その後、岡崎慎司が所属するマインツからもオファーが届いていることが判明。欧州移籍決定秒読み段階と見られる武藤のところには、連日、報道陣が大挙して押し寄せている状態だ。
この凄まじい注目度と反比例するように5月中旬以降、FC東京は鹿島アントラーズ、浦和レッズ、名古屋グランパスに3連敗。武藤自身もJ1では3試合無得点にとどまっている。
20日のJリーグヤマザキナビスコカップ・ヴァンフォーレ甲府戦では2発と爆発したが、肝心のリーグ戦で点が取れていないのは本人も不完全燃焼感が非常に強いはず。
マッシモ・フィッカデンディ監督も「(23日の)名古屋戦で唯一、うまくいかなかったのが前線だ。武藤は自分たちにとって大事な選手。彼に注目が集まるのは理解できるが、彼を含めたFW陣全員がよくならないといけない」とアタッカー陣のさらなる奮起を求めていた。
名古屋戦の武藤はこれまでのFWではなく、4-2-3-1の左サイドという今季初の役割で起用された。
「自分は矢野(貴章)選手のところをしっかり抑えて、そこから生まれたスペースで勝負する役割。あんまり外に張り過ぎず、しっかり出し手に合わせて攻撃に参加する形でした。
いつもよりゴールまでの距離が長かったけど、それが自分の求められた役割。そこで勝手に考えてFWになるとかいうのはない。チームとしての決め事があるんで、今日は戦術通りやりました」と本人はあくまで1つのコマとして動くことを忘れなかった。その献身性が武藤の大きな魅力に他ならないのだ。