“ミラーゲーム”を仕掛けた新潟
この広島を封じるために効果が出やすいのが“ミラーゲーム”と“マンツーマン”の併用である。発案者のペトロヴィッチ監督が、熟知した3-4-2-1を浦和に注入し、2013年の広島戦ではオールコートマンツーマンを駆使して完全に封じた(以来広島は浦和から勝利がない)。ネルシーニョ監督時代の柏も広島戦に向けては3-4-2-1でマンツーマンをしかけ、柏の高い個人能力を前面に押し出して広島を抑え込んできた。今年もネルシーニョ監督は就任間もない神戸でもミラーゲームをしかけ、広島からアウェイでの勝利をもぎとっている。
新潟と広島は、ナビスコカップ予選で一度対戦している、その時は、新潟の前線からのハイプレスに広島は苦しめられ、わずかシュート6本で無得点に抑え込まれた。リーグ戦での再戦に新潟の指揮官で歴戦の策士・柳下監督は“ミラーゲーム”、“マンツーマン”、“ハイプレス”の3重苦を広島に味あわせようと、アウェイの地に乗り込んできた。
ただ、出場停止で舞行龍ジェームズは使えない。そしてコルテースを広島のミキッチの前面に置いてスピード封じを試みる。3人のセンターバックには大井健太郎、大野和成、前野貴徳を据えた。
この布陣が見せたわずかな隙を逃さなかったのが広島の“頭脳的エース”佐藤だった。
「(広島の)ワントップツーシャドーに3人のセンターバックがマンツーマンでついてきた。柴崎に大井選手。僕には大野選手。ドウグラスのところに前野選手。だがドウグラスのところが“ミスマッチ”になっていた。そこを突こうと声をかけた」
佐藤寿人と、柴崎をマークした大井と大野は身長180cm。しかし身長184cmのドウグラスについたのはサイドバックが主戦場の前野。身長172cmと、高さの差が明らかにあった。
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