一抹の不安が残るドイツカップ決勝
そして後期は9勝4分4敗の成績を残して7位に終わって、ヨーロッパリーグの出場権を確保した。前半戦では最下位に転落したこともあったことを考えれば、後期では大きく勝ち越したこのクロップの試みは成功したと言えるだろう。
しかし、このワントップ=オーバメヤンというサッカーには弱点がある。相手が「ワンボランチ」のシャルケ戦、そしてブレーメン戦で「スペクタクル」な勝利を飾ったということが、最大の弱点なのである。
相手がワンボランチということは、例えばダブルボランチに比べてDFラインの手前により大きくスペースがあるということだ。シャルケ戦の後で香川が振り返ったように、オフ・ザ・ボールの動き次第でさらにスペースを作り出すことが出来る。
スペースの確保が連係の流動性と躍動感を生み、シュート数の増加に繋がる。相手のDFは混乱に陥って、大量失点を喫してしまう。
ところがダブルボランチを敷かれてスペースを制限されると、このサッカーは途端に勢いを失ってしまうところがある。0-0のスコアレスドローに終わった第24節、第25節のハンブルガーSV戦、ケルン戦が顕著な例だ。割り切って引いて固められてスペースを与えてもらえないと、連係と流動性を確保することが難しい。
ターゲットマンがいれば多少乱暴にでもボールを入れて攻撃に繋げることが出来るのだが、ワントップのオーバメヤンの現在はその方法を取ることが出来ない。
そこで迎えるポカール決勝には一抹の不安が残る。基本的にボルフスブルクは「ワンボランチ」という方法を取らず、後期開幕戦で4-1と快勝したバイエルン戦のように、引いて固めてからのカウンターを得意とするからだ。
香川が今季では度々「引いて固めた相手をどう崩すか」を課題として上げていたことを考えれば、ポカール決勝のボルフスブルク戦は、その意味でもクロップ体制の集大成と言えそうだ。
【了】