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Jリーグ 10年前

未だ届かぬ大久保の“勇気ある声”。アンフェア行為防止のため、Jリーグが共有すべき危機感

キム・ミンヒョク、岩下敬輔と立て続けにJリーグで起こった悪質なファウル。再発の防止は急務だが、Jリーグは問題に真摯に向き合っているだろうか。勇気を持って提言した大久保の声も風化しつつある。重要なのは個人への批判ではなく、サッカー界全体が問題意識を共有していくことだ。

text by 藤江直人 photo by Getty Images

得点機を阻止した岩下のプレー。提示されたのはイエローカード

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DF岩下敬輔【写真:Getty Images】

 Jリーグの村井満チェアマンのスケジュールは多忙を極めている。たとえば先週は敵地で行われたACL決勝トーナメント1回戦、水原三星対柏レイソル、FCソウル対ガンバ大阪を視察。日本勢の勝利を見届けてから21日に帰国し、午後に都内で行われたJリーグ理事会に出席した。

 職務を精力的に遂行する姿には頭が下がる思いを禁じ得ないが、一方で至極残念なこともあった。村井チェアマンが韓国滞在中に、FW大久保嘉人(川崎フロンターレ)の独白記事がウェブサイト上に複数掲載された。Jリーグの現状に対して警鐘を鳴らす内容で少なからず波紋を呼んだが、理事会後の記者会見で記事に対する感想を求められた村井チェアマンはこう語っている。

「大変申し訳ございませんが、大久保選手のコメントはまだ読めていません」

 大久保が問題視したのは、16日に行われたガンバ大阪の後半アディショナルタイムのワンプレーだった。左タッチライン際で上手くボールを収め、前を向いた大久保がスピードに乗ったドリブルとフェイントでMF遠藤保仁、DF岩下敬輔を抜き去った直後だった。

 岩下が背後からユニホームや腕を引っ張り、大久保を転倒させた。ペナルティーエリア内には侵入していなかったが、大久保がそのままドリブルで進んだ場合、前方にいたガンバのフィールドプレーヤーはDF藤春廣輝だけ。逆にフロンターレのFWレナトが、大久保の右側をサポートしていた。

 2対1の状況となれば、かなりの高確率でゴールが生まれる。得点機会阻止でレッドカードを提示されてもおかしくはない状況だったが、今村義朗主審が提示したのはイエローカードだった。

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