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去り行くバルサの伝説――。シャビ・エルナンデスがカンプ・ノウにかけた“魔法”。決して褪せないスペイン史に残る偉大な功績

text by 山本美智子 photo by Rafa Huerta

シャビがピッチにもたらす“魔法”

 今季のシャビは例年に比べて確かにスタメン出場回数は少なかったかもしれないが、それでも35歳という年齢で総出場数は30試合、そのうち18試合でスタメン出場を果たしている。全くもって悪い数字ではない。

 途中出場だと尚更際立つことがある。シャビがピッチに立ち、ボールを裁きだすと一瞬のうちにカンプ・ノウの次元が変化するのだ。チームのプレーから迷いが一掃されていくその瞬間はある種、感動的だ。シャビと共にピッチ上に秩序がもたらされていくその光景を何年にも渡って繰り返し見て来たが、何度見ても飽きることはない。

 サッカー界で使うスペイン語には「問題を解決するための魔法の杖は存在しない」という言い回しがあるが、シャビに関して言えば彼自身が魔法の杖のようだ。さっきまであったはずの澱みがなくなり、リズムが生まれ、全てが流れ出す。水は高いところから低いところに流れる、太陽のある方向にひまわりは伸びて行く、そういった自然さでシャビがいるとボールが回り始めるのだ。

 彼は決してボールを見ない。常にあごをあげてボールを受け取り、受けた瞬間には最適なルートに向けてパスを放っている。カメラマンが嘆くのを聞いたこともある。ボールを足元に持っているシャビを撮影するのは至難の業なのだと。瞬時のプレーに迷いはなく、彼の冷静さがチーム全体への落ち着きへと姿を変えていく。

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