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セリエA 10年前

ミランも撃破したサッスオーロ。躍進続ける“小さなクラブ”を読み解く2つのキーワード。13年間の健全経営で培ったチームの哲学とは?

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

サッスオーロ躍進に隠された2つの理由

 まず第一の理由は、資金力にある。今シーズンのサッスオーロの年俸総額は約2800万ユーロ(約37億5000万円)と、これはジェノアやトリノ、そしてウディネーゼよりも若干多い。実は、バックには大企業が付いている。2002年に経営権を取得したオーナーのジョルジョ・スクインツィ氏は、イタリアのみならずヨーロッパでも大手に成長した建材メーカー『マペイ』の2代目会長だ。

 マペイがサッスオーロに工場を設置していた縁から、スクインツィは氏1983年から当時セリエD(5部相当)にいたクラブをスポンサーとしてサポートするようになった。その後、企業としてサポートしていた自転車競技チームに資金を集中する関係で一旦離れたが、ドーピング問題悪化を理由に同競技から撤退した後の2002年、当時セリエC2(4部相当)で闘っていたサッスオーロの経営権を取得した。

 そこからセリエAに昇格するまでは11年の歳月を要している。それでも十分凄いことなのだが、パレルモやフィオレンティーナ、そしてナポリなど、急速な資金投入で一気に下部カテゴリーから駆け上がったクラブもある。パレルモのマウリシオ・ザンパリーニ氏やフィオレンティーナのアンドレア・デッラ・バッレ氏といったオーナーより金を持っているともいわれるスクインツィ氏なら、無理をすれば強大補強も可能だったかもしれない。しかし、彼はもっと実直な方法でクラブの経営体力をつけた。そのユニークな経営戦略が、サッスオーロを育んだ第二の理由だ。

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