スタジアム全体を巻き込みたいがサプライズ企画のため…
鳥村の提案を受け、カチタカ内で検討した結果、スタンドのサポーター全員でバースデーソングを歌おうという案まではすんなりと進んだのだが、アイデアはそこで終わらなかった。
恩田が岐阜北高校時代に合唱部に在籍していたことから、ピッチレベルでその北高の現役合唱部生徒やOBの方々、同級生だった人々、そして恩師だった方にソングリードをしてもらおうということまで発展していった。そして、誕生日の定番として、その方々が参加することは恩田には内緒のサプライズ企画として進めようということになったのだ。
企画の概要が決まるとカチタカのメンバーがクラブの運営担当者に許可・協力要請を行い、同時に北高の現役生徒である発案者の鳥村が学校側にアプローチを開始した。途中、クラブとの交渉過程において小さな問題が起こり、二転三転したことはあったものの、何とか当日までこぎつけた。
テレビ中継の関係上、どこのクラブも試合前のスケジュールは分刻みで設定せざるをえない。なおかつ、今回はスタジアムにいる恩田に内緒でコトを進めなければならないのだ。ソングリードの役割を担った北高関係者だけでも40名を超えている。それだけの人数を同一の場所で恩田の目のつかないところに待機させ、タイミングよく誘導しなければならない。
一方、ピッチ外でもキックオフの何時間も前からサポーターがそれぞれ手分けしていろんなことを行っていた。
スタジアム全体を巻き込むためには周知の徹底が必要となるが、いかんせんサプライズ企画のため恩田の目のつきそうなところでそれをやるわけにはいかない。ネットでの事前告知などもってのほかだ。
そこで安田聡、尾関泰史、藤原一浩らカチタカのメンバーが中心となって試合当日にサポーターの目につきやすく、それでいながら恩田の目につかなさそうな場所にパウチした貼り紙を掲示した(写真左)。
さらに用件のみを記したシンプルなビラを作り、入場者一人ひとりに手渡しをした(写真右)。また、アウェイの愛媛サポーターにも連絡を取り、協力を依頼した(この依頼は内容がうまく伝わらなかったようだが、愛媛サポーターなら事前の連絡がなかったとしてもおそらく同じ結果になっていただろう)。
ちなみに、FC岐阜がホームとする長良川スタジアムには個席の他に芝生席があり、そちらを好む観客も少なくないため、座席一つひとつにビラを置いておくわけにはいかないのだ。