W杯スペイン大会で落胆したハリルホジッチ
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が、これまでのサッカー人生でもっとも多くの時を共有した盟友がいる。
現在、ナントでアシスタントコーチを務める、ブルーノ・バロンケッリだ。
ナントでの現役時代は攻撃のパートナーとして、指揮官になってからは、監督を支えるアシスタントコーチとして、バロンケッリはリールからコートジボワールまで、ハリルホジッチとキャリアを共にした。
「彼がナントに加入してきた頃のことは、よく覚えている。あの頃はまだ旧ユーゴスラビアの時代で、選手は28歳になるまで国を出ることができなかったから、ヴァイッドが来たのも28歳のときだ。フランス語もまったく話せなかったし、元来が内向的な性格だから、最初からチームのみんなと打ち解けたわけではなかったが、ピッチの上ではすぐに実力を発揮した。彼はストライカーに必要な要素をすべて備えた完成型のフォワードだった。長身だから当然ヘディングにも強く、足は右、左、両方を同じように使いこなし、プレースキックの精度も高かった」
サイドアタッカーだったバロンケッリとハリルホジッチは、今のPSGに例えるなら、ルーカスとイブラヒモビッチのような関係だったという。
「ヴァイッドとは多くを語り合わなくてもわかりあえた。わたしがパスを出し、それをヴァイッドが決めた。すでに選手時代から、呼吸は合っていたんだね(笑)」
ナントに加入した当時、ハリルホジッチには絶対的な目標があったという。
「翌夏のスペインW杯で活躍することだ。そうして世界に自分の才能を知らしめたいと彼は思っていた。ところが、予選で活躍して本戦出場に貢献したにもかかわらず、本戦ではサブ扱いでほとんど使われずに終わってしまった。ナントに戻ってきたときの彼の落胆ぶりは相当なものだったよ」