走りの質を追求する永井。新たな可能性も
ロンドンオリンピックで活躍して海外移籍を果たし、W杯ブラジル大会に臨む――。プロ入りと同時に描かれた青写真は、残念ながら現実のものとはならなかった。だからこそ、グランパスへの完全移籍をロシア大会への新たなスタートとしてほしい、自らの実力で価値を上げてほしいと久米社長はエールを送る。
「前回のような低い違約金の設定を、今回はしていません。言い値ですね。たとえば10億円といえば10億円です。その意味でも、いまのポジションはいいんじゃないかな。永井が走り出せば、お客さんが沸きますからね」
自分のなかに新しい可能性が生まれている現状に、永井も手応えを感じている。
「サンフレッチェ戦であんなに綺麗にはまるとは、監督も思っていなかったんじゃないですかね。僕自身も守備をしながら、そこから攻撃へ出ていくところで感触もよかった。しんどいし、体への負担も大きいけど、だからこそ距離よりも質で勝負しています」
今後は攻撃時にタッチライン際に張るだけでなく、左サイドから中へ入ってボランチとして進境著しい矢田旭やダブルシャドーに入る選手たちとのコンビネーションも構築していく。
「みんなを生かしながら自分も生かされれば、もっとリズムが上がっていくと思うので」
泥沼から脱出するために弾き出された、相手のストロングポイントを打ち消すための緊急コンバートが、ひょっとすると大きな果実を産み落とすかもしれない。
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