「あれだけ走れて、守備もできる選手はなかなかいない」
GMとして2010年シーズンのリーグ初優勝を縁の下で支え、4月にグランパスの代表取締役社長に就任した久米一正氏は「いまのポジションのほうが、永井は生きるんじゃないかな」とこう続ける。
「ペナルティーエリアがだいたい200坪あるとして、その左右にあるそれぞれ80坪をめぐる攻防にサッカーの醍醐味が生まれてくると僕は考えている。この80坪を突けば相手の最終ラインの誰かが釣りだされて、必然的にスペースが生じる。
その意味でも、永井をサイドに配置すれば戦術的にも相手が嫌がる。あのスピードには誰も勝てないし、攻守両面において武器になる。あれだけ走れて、守備もできる選手はなかなかいない。日本代表の新しい監督が好むような『飛び道具』になるんじゃないかな」
Jリーグが発表しているトラッキングデータによれば、永井の走力を示す1試合あたりの平均データは、コンバートの前後でほとんど変わっていない。
【走行距離】9.895km→9.75km
【スプリント回数】30.5回→29.83回
永井本人は「このポジションでは10km以上は走れないですね」と苦笑いを浮かべる。しかし、4ゴールのうち3つをコンバート後にあげていることを考えれば、自陣から長い距離を滑走し、相手のペナルティーエリアへ向けてギアを上げていくスタイルがいかにチームにフィットし、相手に脅威を与えていることがわかる。
2013年1月にベルギーのスタンダール・リエージュへ完全移籍したが、出場機会に恵まれないまま同年8月に期限付き移籍でグランパスへ復帰。今シーズンから完全移籍へ切り替えられた。海外志向が強かった永井の意向もあり、実は福岡大学から加入する際の交渉で違約金(移籍金)が低く設定されていた。
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