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Jリーグ 10年前

FC東京・武藤がJリーグで傑出した選手である理由。“心技体”を揃えた、試合を決められる稀有な存在

text by 青木務 photo by Getty Images

心技体が揃っているからこそのパフォーマンス

 以降、完全にFC東京がペースを握ると71分、太田宏介のFKで同点に追いついた。そして87分、冒頭に記したように武藤が値千金の逆転ゴールを叩き込み、チームを勝利に導いた。

 味スタに歓喜をもたらした武藤のプレーを見ていて思うのは、心技体すべてが高いレベルで備わっているということだ。

 いくら相手に削られても平常心のままプレーしている。毎試合、相手の厳しいマークに遭っており、川崎戦でも幾度も削られたが、じっと耐えていた。

 また、チャンスを逃しても『次は決めてやろう』と考えている。52分にも決定機を迎えたが、うまくミートすることができなかった。だが武藤は「切り替えて、もう一度チャンスが来ると信じていた」と、次に来るであろう“その時”に気持ちを向けていた。

 たとえ味方のフォローがなくても、またアバウトなボールを出されたとしても、確実にマイボールにできる。カウンターが大きな得点源であるチームにあって、武藤がブレずに自分の仕事を遂行してくれることは戦術上、非常に大事になってくる。さらに「ドリブルを多用するポジションではない」と言いつつも、果敢な突破から相手の退場を誘発している。勢いだけでなく、緩急や間合いの取り方も心得ている。

 そして、武藤の高い貢献度には豊富な運動量が欠かせない。相手との競り合いで力を削ぎ落とされているはずだが、90分間その動きを止めることがない。プレスをかけ、フリーランニングを欠かさず、チャンスの場面には必ず走り込む。簡単なことのようで相当に難しいことを、青赤の背番号14は当たり前のように実行し続けている。

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