42604人が詰めかけた味スタ
注目の一戦で試合を決めたのは、注目を集める武藤嘉紀だった。自らが粘ってFKを得ると、これ以上ないほどドンピシャのヘッドでゴールネットを揺らした。
飛田給駅からスタジアムへの道中にある歩道橋。そこには「すべては勝利のために」というバナーが掲げられていた。全員の高い守備意識と鋭いカウンターを中心にしぶとく勝ち点を積み上げているFC東京。勝利への思いはこんなところにも表現されていた。
毎回、熱戦が繰り広げられる多摩川クラシコ。この日、味の素スタジアムには42604人が詰めかけた。堅守が光るFC東京と、リーグ最高の得点力を誇る川崎フロンターレの一戦には、期待と興奮が渦巻いていた。
先に仕掛けたのはアウェイの川崎。セットプレーから大久保嘉人がJ1通算140点目を決めて“キング越え”を果たした。
前半20分にしてビハインドを背負ったFC東京が、このまま押し込まれてもおかしくなかった。実際、川崎は前節に比べてパスワークがスムーズで、大久保と船山貴之のコンビネーションも機能していた。
それでも後半に入ると少しずつFC東京が勢いを強めていく。ハーフタイムにマッシモ・フィッカデンティ監督から「リスクを冒してでも前に出てボールを奪おう」と指示を受け、前からのプレスを徹底した。急先鋒となったのは武藤だ。相手のボール回しは一級品だが、挫けることなく食らいついていく。また、味方からのボールをキープし、味方が押し上げるための時間を作る。行けるとわかれば迷わず前を向いて仕掛けることも忘れなかった。
そうした姿勢に相手の対応が少しずつ遅れる。そうして迎えた64分、試合の流れを大きく変える出来事が起きた。武藤のドリブルをファウルで止めた川崎のDF車屋紳太郎が2度目の警告で退場を宣告される。