北中米カリブ海の出場枠が増え、アジアが減らされる可能性も
アジアとアフリカの枠がそれぞれ増えた背景には、ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)が開催国枠に割り当てられる「0.5」枠増の権利を返上した件がある。FIFA理事たちが食事をともにしている最中に、UEFA選出の理事が返上を公言。その場にいた小倉名誉会長がすぐに手を挙げたという。
当時のやり取りを、小倉名誉会長はこう振り返ったことがある。
「アフリカも欲しいというので、半分ずつ分け合いました。その場にいなかったら、アフリカの枠がそのままひとつ増えていたかもしれない」
W杯開催国を決める投票権をもつFIFA理事は、各国サッカー協会の要人とあらゆる人脈を形成することが可能で、結果として情報収集力で大きなアドバンテージを得られる。
喫緊の懸案事項としては、5月下旬のFIFA理事会で決定する、2018年のW杯ロシア大会の大陸別出場枠の問題がある。
前回大会の成績が考慮されるといわれるなかで、コスタリカ代表がベスト8、メキシコ代表とアメリカ代表がベスト16にそれぞれ進出した北中米カリブ海の出場枠に関して、FIFAのゼップ・ブラッター会長が従来の「3.5」から「4」に増やす青写真をほのめかしている。
実現すれば、必然的に他の大陸の出場枠が削られる。その矛先は間違いなく、日本代表を含めた出場4ヶ国が1勝もあげられず、グループリーグで敗退したアジアへ向けられてくるだろう。
だからこそ、AFC選出のFIFA理事はあらゆる情報を入手し、水面下での交渉や政治力を駆使して現状の出場枠「4.5」を死守する役割を担う。しかし、田嶋副会長と鄭会長以外の国は、昨夏のブラジル大会を含めた直近のW杯に出場していない。交渉における説得力という面で、不安を抱かざるを得ない。
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