転機となったキャティサック監督の就任
近年の国内リーグの盛り上がりとは裏腹に、タイ代表は苦杯をなめていた。2015年のアジアカップ予選ではイラン、クウェート、レバノンという中東の強豪と同組に入り、6戦全敗で敗退。その間、チームを率いていた元カメルーン代表監督のシェーファーと協会の間で退任をめぐってひと悶着あり、後を受けたスラチャイ監督も予選終了を待たずに任を降りた。豊富なタレントを抱えながら、どこか彼らを生かしきれない、そんな状態が続くかと思われた。
そこへ昨年、1990年代から2000年代にかけて活躍し、タイ代表の歴代最多キャップを誇るキャティサックがフル代表の監督に就いた。タイで“ジーコ”のニックネームを持つかつての名FWは元々U-23代表の監督を務めており、当初は兼務に難色を示していたものの、暫定監督を経て昨年末の東南アジアサッカー選手権(スズキカップ)を前に正式に就任した。
現在41歳の若き指揮官は、現役時代の栄光に比べてそれまで指導者として目立った実績はなかった。それでも、まずU-23代表監督として2013年にミャンマーで行われた東南アジア競技大会で6年ぶりにタイに優勝をもたらすと、昨年、韓国・仁川で開かれたアジア大会では準決勝で韓国に敗れたものの4位に入った。
そして、その名声を高めたのが、昨年のスズキカップでの劇的な優勝だった。これまで指導してきた若い世代を中心にチームを編成し、無敗で決勝まで進出。マレーシアとの決勝戦ではホームでの第1戦を2対0で勝利したが、アウェイの第2戦では序盤から失点を重ね、後半途中までに3点のリードを許してしまう。
このまま終わればマレーシアに優勝をさらわれてしまうところだったが、終盤に2点を奪い、試合には敗れたもののトータルスコアで上回って実に12年ぶりに優勝を飾った。キャティサックは選手、監督の両方で初めて同タイトルを獲った人物となり、選手と共にテレビCMに出演するなど、一躍時の人になった。