メッシの仲間が1人もトップでプレーしていない現実
昨年末、地元のテレビ局がまさにそれを題材にしたドキュメンタリーを作った。レオ・メッシが13歳の時のバルサのチームメートが、当時を振り返っていた。10年前、メッシと同じピッチに立っていた少年たちは、今エンジニアやスポーツショップの店員やスポーツジムのインストラクターになっていた。
中には、2部や3部でプレーする現役選手やユースカテゴリーでコーチとして教えている者もいたが、トップカテゴリーでプレーしている選手はいなかった。
当時、メッシ同様に将来を有望視されていた少年は17歳の時に父親が急逝し、精神的にも、もうサッカーをできる状態ではなくなったことが離れる理由になったと話していた。18歳という年齢は一つの分岐点になる。
ビッグクラブの看板を背負ってプレーすることのプレッシャーに打ち勝てなかった、技術はあるのに試合になる度にナーバスになってしまい力が出せなかった、毎週新たに増えるテスト生との競合に精神的に疲れ果ててしまった、フィジカル面でクラブが求める成長が認められなかった、偏頭痛が治らず、あらゆる手を尽くしたが、原因が解明できなかったなど、彼らがトップへの道を断つことになった理由は様々だった。
その中で一つだけ明白なのは、才能の問題ではなかったということだ。才能だけでは道が開かれないこともあるという厳しい現実がそこには立ちはだかっている。
日本に戻った久保くんが果たして今後どうなるのか。当たり前だが未知数だ。私たちにできるのは、彼の成長の芽が摘まれないような良き指導者、チームメートに恵まれ、落ち着いてサッカーを楽しめる環境が整っていることを祈るのみ。
願わくは日本のメディアには静観を望みたいが、それが叶わなくてもそういった周囲の喧噪に負けず、本来の目的を見失うことなく成長していって欲しいと思う。こういった困難な状況に直面しても、負けないこと。それは口で言うほど簡単なことではない。しかし、それこそがプロへの扉を開く道へ導いていく鍵になるのだ。
【了】