「演出家」としての側面も併せ持つ戦術家
契約期間を1年残しながらマインツの監督を電撃的に辞任して、およそ7ヶ月が経った頃のことである。2014年の12月、ミュンヘンのとあるバーでトーマス・トゥヘルは、バイエルンの指揮官ペップ・グアルディオラと落ち合った。
2015年4月19日、ボルシア・ドルトムントは、公式HP上でトゥヘルがユルゲン・クロップの後任者となることを発表した。7月1日からの3年契約である。
この一報に、ドイツメディアは直ちに反応した。キッカー電子版は13時21分付の記事で「パーフェクト! BVBでトゥヘルがクロップの後を継ぐ」と見出しを付けて、ハンス・ヨハヒム・ヴァツケ社長の手際の良さを評価した。
ツァイト電子版は16時14分付の記事で「新しいBVBの指揮官トーマス・トゥヘルはフットボールの研究者である」としている。
そしてシュピーゲル電子版は15時54分付の記事で、その「フットボールの研究者」のグアルディオラとの会合を「パーフェクトな演出の一部だった」と記した。
人の目に付くところでペップと会っておきながら、その後何ヶ月にも渡って、トゥヘルはインタビューに全く応じなかった。マインツ時代に若き戦術家として名を馳せたトゥヘルは、「演出家」としての側面も併せ持っているようだ。
しかしシュピーゲル電子版が「このランデヴーが全てを物語っている」とするように、トゥヘルの嗜好する戦術がペップのそれであることは、そのまま周知の事実となっている。
3月のツァイト紙のインタビューの中では、08-09シーズンにマインツのU-19を率いていた頃から、ペップのバルセロナに感銘を受けていたと強調した。
トゥヘルは「グアルディオラのバルセロナからは全てを学ぶことが出来た」と語る。特に「カタルーニャ人のゲーゲンプレッシング」、つまりロスト時の素早いプレスによるボール奪取に「感銘を受けていた」。