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香川真司 10年前

「まだ物足りない」。貪欲な姿勢の香川。恩師退任に「寂しさ」も前を向く「新たな挑戦」

text by 本田千尋 photo by Getty Images

まだまだ貪欲な姿勢を見せる香川

 58分、ブワシチコフスキがミキタリヤンとのワンツーからシュートを打つ。GKクルーゼに阻まれる。68分、ギュンドアンからパスを受けた右サイドのドゥルムの折り返しに、オーバメヤンがファーサイドで合わせる。オフサイドの判定。78分、ドゥルムのシュートをクルーゼが弾いたところを、香川が詰める。オフサイドの判定。

 そして79分のことだった。香川はミキタリヤンのパスに抜け出すと、左足できっちりと決めきった。3月21日のアウェイでのハノーファー戦以来のゴールとなったが、香川は「まだまだ物足りない」と貪欲な姿勢を崩さない。

「特にホームで今シーズンまだ2点目ですし、サポーターに対してもそうですけど、自分の結果に対しても悔しい気持ちが一杯なので、喜んでいる場合ではない」、と。

 そして香川は「新たな挑戦だと思ってやって行きたい」と言う。クロップ監督に対する「一杯の感謝」、ドルトムントのサイクルが一つ終わることへの「寂しさ」といった個人的な気持ちはもちろんある。しかしまだ終わっていない今シーズンはもちろんのこと、BVBからクロップが去った後も「プロ」のフットボーラーとして目の前の試合を一つ一つ戦って行かなければならない。

 クロップの辞任という決断を「尊重」しながらも、「新たな監督、環境の中でやれることになったので、しっかり切り替えてやっていきたい」と、「プロとして」の新たな決意を口にした。香川の言う「こういう世界」では、監督の交代劇は珍しいものではなく、そんな中でも選手には常に結果が求められるのだ。

 今節パダーボルンを相手にゴールを決めたときには、香川の新しい挑戦は、既に始まっていたのである。

【了】

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