「本物の愛」を持つクロップ
会見でクロップは語った。
「ボルシア・ドルトムントは、今明らかに変化を必要としていると、私は思う。そのためには1つの大きな頭が取り除かれなければならない。それはこの場合、私なのだ」
クロップの言葉は、引き際の美学や勇退といった言葉だけで片付けられるような簡単なものではないだろう。7年の間に、その哲学の下で時代の先端を行くチームを作り上げて、国内リーグ戦、カップ戦のタイトルを獲得した。チャンピオンズリーグではドルトムントを再び決勝にまで押し上げた。
しかしクロップのBVBとの別れが、人々の感情を動かし、惜しまれるようなところがあるのは、多大な功績はもちろんのこと、やはりクロップ本人の中に「本物の愛」があるからなのではないだろうか。
選手たち、ファン、そしてフットボールに対する情熱…。ドルトムントのゴール直後の、ベンチ前でのパフォーマンスがいささか大袈裟であるように、クロップは情動の塊なのだ。何より今回の決断は、BVBに対する「本物の愛」が芯にあったからだろう。普段サッカーにあまり関心のないドイツ人でさえ、今では「クロップとドルトムントは1つだ」と言う。
後任には前マインツ監督のトーマス・トゥヘルの名も囁かれるが、クロップが去った後のドルトムントの未来は、誰にも分からない。18日のブンデスリーガ第29節、パーダーボルン戦で去りゆく指揮官に8万の観衆から万雷の拍手が送られることを除いては。
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