日本人には厳しすぎるイングランド移籍
さらに武藤の移籍に障害となりそうなルール改正がある。
(4)イギリスの労働許可証発給は、プレミアリーグのクラブでプレーする選手に限る
(5)他クラブへ貸し出された選手が労働許可証の発給を受けてイギリスへ戻ることの防止
(6)異議申し立ては手続きの不備で取得できなかった場合に限る
この3項目が実際に適用された場合、多くの選手を期限付き移籍で他クラブに貸し出しているチェルシーは大打撃を受ける。
現在チェルシーは国内外に27人もの選手を貸し出しており、中にはボスニア・ヘルツェゴビナ、オランダ、ポルトガル、スペイン、ベルギー、ドイツ、イタリア、チリといった国外でプレーする選手も多くいる。
仮に武藤がチェルシーで出場機会を得られず、プレミアリーグ以外のリーグでの武者修行を希望しても、そこから元通り復帰することは叶わなくなってしまうのだ。
これまでにイングランドでプレーした阿部や李、林のように2部からのステップアップを狙ったり、宮市のように国内外へのレンタルを繰り返したりもできない。
チェルシーからの移籍、すなわちイングランドでのキャリアの終わりとなってしまうのならば、あまりにリスクの高い挑戦だ。
実際にチェルシーで出場機会を得られなかったベルギー代表MFケビン・デ・ブルイネやドイツ代表FWアンドレ・シュールレは移籍を選択したが、彼らのようにヨーロッパのトップレベルで活躍できる選手でさえ居場所を作るのが難しいチームで、武藤がコンスタントにプレーできる保証はないに等しい。
モウリーニョ監督は10日の記者会見で「我々が優れたプレーヤーと信じられなければ、その選手を買うことはない。これは紛れもない事実だ」と語っており、門の隙間は限りなく狭い。
2年前まで大学サッカー界のスターだった学生がプロになり、日本代表へ駆け上がり、いつの間にか世界へ飛び出そうとしている。まるで漫画のようなサクセスストーリーだ。
イングランドは大いにチャレンジする可能性のある環境だが、同時に高いハードルとリスクが待ち構えている。武藤はチェルシーでの挑戦を選ぶのか、それともFC東京でタイトル獲得に全力を尽くすのか、他の選択肢を取るのか。12日と言われるチェルシーへの回答期限が迫っている。
【了】