もう1つの障害…外国籍選手移籍ルールの改正
ここまで武藤のチェルシー移籍に関して2つの可能性を提示してきたが、最もネックになる労働許可証の取得に関するルールが改正され、EUおよびEFTA圏外国籍選手の移籍のハードルが高くなる可能性がある。
イングランドサッカー協会(FA)は昨年9月、同国内における非EU圏内国籍選手の割合を現在の半分以下に減らすためのルール改正案を明かした。
これはプレミアリーグで自国籍選手の割合が年々減っていることなど、いくつかの要因で代表の強化に支障が出るという判断に基づくものだ。
ブラジル人や他のEU圏外国籍選手の多いチェルシーに限っては例外だが、イングランド人選手から出場機会を奪っている多くはEU圏内の国籍を持つ選手たちで、リーグ全体を見れば日本人や韓国人といったEU圏外国籍選手の影響は小さい。いわば批判を回避するための“その場しのぎ”に過ぎないのだ。
これまでのルールは、(1) 移籍直前の2年間で代表Aマッチ(親善試合を除く公式戦)の75%以上に出場していること、(2) 過去2年間のFIFAランキングの平均順位が70位以上であること、という2点が主だった。
これが新ルールでは、(1)FIFAランキング30位以内の国の選手は過去2年間の自国代表での公式戦出場率30%以上、(2) FIFAランキング70位以上を50位以上に上方修正、となり、条件はかなり厳しくなる。
また、(3) FIFAランキングや代表出場歴に関係なく、移籍金(市場価値)1000万ポンド(約18億円)もしくは1500万ポンド(約26億5000万円)以上の優秀な選手、という新たな項目が加わる。
FAが来季からの施行を目指す3つのルールによってEU圏外国籍選手の獲得に厳しい制限を設けることになるが、これが武藤の移籍において最も大きな障害になりかねない。
一部報道では武藤の移籍金は400万ポンド(約7億円)と伝えられており、ルール改正後の条件には当てはまっておらず、日本代表での出場試合数も足りていない。
仮に来季からの導入は難しくとも、冬の移籍市場や次のシーズンに何が起こるかはわからない。ルール改正で武藤に高い移籍金を払わなくてはならないとなれば、チェルシーをはじめとしたプレミアリーグのクラブは手を引いてしまうかもしれない。