“遅咲き”のレジスタ、エンポリのMFミルコ・ヴァルディフィオーリ【写真:Getty Images】
ミルコ・ヴァルディフィオーリ。1年前まで誰も知らなかった28歳のレジスタ(プレーメーカー)は、今やアズーリを華麗に指揮する存在となった。イタリアサッカーが産んだ遅咲きの“シンデレラボーイ”だ。
イタリア代表のアントニオ・コンテ監督は3月21日、EURO予選に向けた招集メンバーを発表した。ヴァルディフィオーリは始めての代表選出に興奮を隠せなかった。今季セリエAに初挑戦を果たした同選手にとって、この1年間はまさに激動の一年となったことだろう。
ヴァルディフィオーリはこれまで全てのキャリアをセリエB(2部)とセリエC1(3部)で過ごしてきた。ボローニャ近郊のルーゴに生まれた同選手は、チェゼーナの下部組織を経て2004年に同クラブとプロ契約を締結。2005年5月14日ジェノア戦でプロデビューを果たした。
当時のチェゼーナ指揮官であったファブリツィオ・カストーリ監督はラジオ『キス・キス』でヴァルディフィオーリについてこう振り返った。
「彼は既に17歳の頃には大きな才能を持っていた。デビュー戦でうまくプレーしたことを覚えているよ。当時のジェノアは若かりしFWディエゴ・ミリートを抱える偉大なチームだった」
期待された才能とは裏腹に、その後ヴァルディフィオーリは出場機会に悩まされることになる。2006年にチェゼーナを退団すると、セリエC1のパヴィア、レニャートで武者修行の日々を過ごした。
ヴァルディフィオーリに転機が訪れたのが、2008年のエンポリ移籍だった。前年にクラブ初となるUEFAカップ(当時)に出場したエンポリは、セリエAとの二足の草鞋を履くことができず降格を余儀なくされた。そして、セリエBで戦うために獲得されたのが同選手だった。
エンポリで出場機会を得たヴァルディフィオーリは、すぐにチームの主軸として活躍した。2009年には自身初となるゴールを、奇しくも古巣チェゼーナに決めている。
そして、エンポリは昨季ついにセリエA昇格を決め、ヴァルディフィオーリにとって飛躍のシーズンが始まったのである。ヴァルディフィオーリはキャリアを通じて一貫して中盤のレジスタとして活躍してきた。
イタリア代表選出の際にも「理想はアンドレア・ピルロだ」と語っていた。それでも、「まずはクラウディオ・マルキージオやマルコ・ヴェッラッティのように国際舞台での経験を積むことが重要だ」と謙虚な姿勢も崩さない。
週末のエンポリ戦で、ユベントスのピルロは欠場が濃厚視されている。自身のアイドルとの再戦は叶わないが、ヴァルディフィオーリのモチベーションは高い。
今季の活躍により、同選手は来夏にミランやナポリといったビッグクラブへの移籍は間違いないとみられている。遅咲きのレジスタが欧州の舞台で活躍する日も近い。
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