無敗キープもイタリア戦で露呈した不安要素
一方、マイナスは自軍の劣勢を招いた戦術。親善試合は「実験」の場でもあるが、3-5-2システムのイタリアに対して中盤が菱形の4-4-2採用は賢い選択とは言い難い。事実、イングランドは、相手ウィングバックのアレッサンドロ・フロレンツィとマッテオ・ダルミアンにアウトサイドを走られた。
中盤の底で起用されたフィル・ジョーンズはチーム最低の出来。「器用貧乏」の感が強い23歳は、ようやくマンチェスター・ユナイテッドではCB起用が増えてきたが、代表でも同様の扱いをすべきだろう。ジョルジョ・キエッリーニのクオリティが光ったイタリアの最終ラインとは対照的に、イングランドの4バックは強豪対決では心許なさを隠せないだけに、将来のある正CBを実戦で育てる必要がある。
攻撃面では、ケインの「通用具合」を確かめることが主目的の1つだったとすれば、指揮官自身が「基本システム」を示唆している4-3-3でセンターFWとして先発させた方が効果的だったと思われる。ダニエル・スタリッジ、ラヒーム・スターリング、ダニー・ウェルベックが故障中でも、ルーニーとセオ・ウォルコットを左右に配した3トップを組むことはできたはずだ。
ウォルコットはケインと2トップを組んだ。本人の望みでもあるストライカーとしてのウォルコットは興味深いが、クレバーな動きではなく直線的な速さで勝負するタイプで、アーセナルでの出場機会が限られてもいるウォルコットにとって、守備時は5バックのイタリアDF陣を前に戦う状況は厳しかった。当人は存在感を欠き、相棒のケインにはスペースを、背後のルーニーにはパスの選択肢を提供することができず、前半の鈍いチームパフォーマンスに繋がった。
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