上がる数値。やはり高い双葉町
アジアカップの話題が途切れると、広野町を出るところだった。地図上で広野町の北にあるのは楢葉町だ。ここも数値は低い。
「この街は除染が終わっています。家の取り壊し費用を国が持つのですが、除染が終わってからの着手ということでそれは無駄遣いなのではないかという声も上がっています。浪江町は先に取り壊してから除染をしようとなっているのに――あ、ちょっと(線量が)上がってきましたね」
福島第二原発の近くを通る富岡町で0.2μSv/h。そのうち0.4、0.5……と数値が上がっていく。
「6号線の脇の、除染されたところが覆われていないと、どうしても高くなる」と西氏。
じょじょに、震災時に批難したときのままの家屋が眼に入ってくる。
楢葉町では24時間営業のコンビニエンスストアがオープンしたが、富岡町にそうしたお店はないという。楢葉町までが「安全」という判断だとすれば、富岡町から先は「危険」の色合いが濃くなっていくことになる。
双葉警察署を過ぎると、原子力の長所をアピールする東京電力のエネルギー館が、戒めのモニュメントと化していた。0.6、0.7μSv/h……また数値が上がっていく。
東京から246kmの大熊町に入って1.6μSv/h。
2.3、2.9、3.24μSv/h……と数値が上がりつづけると、西氏から「右が福一です」と知らされる。福一からは直線距離で約3.8kmの地点だった。
双葉町に入ると低くとも3μSv/hくらい、線量が高いところでは9μSv/h台で、10μSv/hを超える瞬間もあった。
あの事故の際、二回めの爆発で放射性物質が北西方向に流れている。おそらく、その通り道で線量が高くなっているのだろう。
原発周辺の街には、安全と危険が入り組むように同居していた。どっちなんだ、と訊かれれば、安全だとも危険だとも断言できない。