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日本代表 10年前

勝利のためには非情采配も――。フランス在住記者が迫る、次期代表監督ハリルホジッチの知られざる人物像

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

背信行為には厳格な対応も

 しかし、フランスメディアの多くがレッテルを貼るような「独裁者」では決してないとかつての腹心たちは口を揃える。

「常にスタッフの意見に耳を傾ける。最終的に決めるのはヴァヒドだが、彼は周囲の者へのリスペクトは欠かさない」

 しかしひとたび方針が決定したならば、それをとことん貫く。その一徹さを、メディアは「軍隊のようだ」と揶揄するのだろう。

 彼がもっとも嫌うのは、嘘や背信行為だ。

 チーム内での出来事が知らずにメディアに漏れている、というのはよくある話だが、それが起きるのは、必ず誰かメディアに内情を漏らしている人物がいるからだ。

 パリジャン紙には、非公開だったはずのパリ・サンジェルマンの練習内容が載っていたりするが、番記者のドミニクに「一体どうやって?」と尋ねるたびに、彼は意味深な笑いを浮かべて「植え付けてあるからね」とウィンクする。

 そのような人物をフランスでは「モグラ」と言うが、アルジェリア代表を取材していた同国のマブルーク記者は「ヴァヒドはモグラ探しを徹底していた」と話す。

「選手のロッカールームに近づけるスタッフの誰かが、モグラ監視役を任命されているらしい、という噂が選手たちの間にも流れていたから、おのずと彼らも警戒していたんだ」

 率直であることを信条とするハリルホジッチ監督は、思った事をストレートに口にするため、ときに誤解を招き、メディアから非難を受けることも多い。それは真実をぼかすことを嫌う彼の性格を象徴しているのだが、それは選手に対しても同様に向けられる。

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