全ての試合がジャイアントキリング
対戦相手を徹底的に分析し、勝利のエッセンスとして注入していくのが反町のスタイルではあるが、戦い方の基本はほとんど変えない。攻撃での人数のかけ方や守備の位置は対戦相手うんぬんよりも、あくまで試合の流れで変化するものなのだ。そのことに関して柴田峡コーチは「トレーニングに関しては、相手がどこだからと言って変えることは基本的にはしないですね」と語る。
「例えばジュビロ磐田やガンバ大阪が相手だから、少し全体のラインを下げようとか、そういうことはしなかったですね。やはりうちのやるべきサッカーを守備から入っているというか、守備の約束事がかなりソリッドになっているので、ボールの位置によって守備を変えて行くというやり方は取っていますけど」
それでは毎試合、ミーティングで指示する相手の対策はどういうものなのか?「それはディテールです。かなり細かいところ」(柴田コーチ)。試合の前日か前々日に1時間のミーティングを行い、そこで反町監督やコーチングスタッフが分析を重ねて導いた対策を徹底的に伝える。「僕らスタッフはスカウティングをしてからのミーティングなので当たり前ですけど、自分が選手ならそんなに長いのは絶対に嫌なんですよ」と柴田コーチは語るが、それこそが反町のすごさであることを認めている。
「格下相手であれば15分、格上なら1時間というわけじゃないんですよ。ソリさんの中でも、それをやっちゃう勝負の世界はいけないというのがあって、なかなかそれを分かっていても継続するのは難しいじゃないですか。そこがぶれないというか、どんな相手に対しても自分のスタンスを崩さないんですよ」(柴田コーチ)
どんな相手との試合にでも真摯に臨み、戦術面だけでなくキャラクターや人間性のところでも隙を作らない姿勢が、研ぎ澄まされたチームを作り上げていったとも言える。「全ての試合がジャイアントキリング」と語る反町監督にとってJ1は湘南時代、昇格の1年目に最下位で降格という苦い思いをした舞台でもあるが、戦い方にブレも妥協も無い。気鋭の指揮官が率いる松本山雅がJ1に大きなインパクトをもたらすのか、それとも戦力差の壁に跳ね返されるのか。日本サッカーの革進にもつながりうる彼らの挑戦に注目したい。
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