“隙を与えず、隙を突く”反町康治の哲学
3月7日(土)の開幕戦では豊田スタジアムで名古屋グランパスと対戦する松本山雅。これまで天皇杯などで数々のジャイアントキリングを起こしてきたが、J2に昇格した2012年に反町康治監督が就任すると、大きな成長を遂げてわずか3年でJ1昇格を果たした。
初のJ1での戦いに備えて多くの新戦力が加入したが、タレントをそのまま足し算すれば“降格候補”であることは確かだろう。しかし、厳しいトレーニングによって身に付けたハードワークと一貫した堅守速攻のスタイルを継続しながら、試合ごとに徹底した対策がうまくはまれば、周囲をあっと驚かせる躍進も十分にありうる。
そのスタイルは現在の日本サッカーに欠けている“隙を与えず、隙を突く”哲学を地で行っており、松本山雅の躍進が、ACLで苦戦が続くJリーグ勢を目覚めさせるきっかけとなるかもしれない。
松本山雅をメインエピソードの1つとしてまとめた著書『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』のインタビューで反町監督はこう語っている。
「例えば去年のブンデスリーガだったらブラウンシュバイクが上がって来たとか、今シーズンはパーダーボルンとか、そういうあまり馴染みのないクラブが出て来ると、注目して観てしまう。数年前のトゥヘル監督のマインツもそうだった。(ブラジルW杯の)チリもそうだけれど、そのチームや率いている監督がどんな経歴なんだろうとか、インターネットや映像を見たりするわけだよ」
「そういうクラブに自分が注目して見ている自分と同じ様に、松本山雅もそうして注目されている部分はあるかもしれない。要するに『松本山雅? 聞いた事もないな』というチームが下馬評の低い中から上がってきたわけだからね。でも、何もしなくて、例えば番狂わせを起こそうと思って起こせるもんじゃないから。それなりの準備とか、分析とか、サポーターの力とか、雨とか風とか、色んな理由が必ずある」