称賛されるべき柴崎岳の絶妙なポジショニング
柴崎のシュート自体も素晴らしいのですが、見るべきポイントはそこだけではありません。長友から中盤中央でパスを受けるまでに柴崎が見せたポジショニングこそが高く評価されるべきです。
端的に言えばあの時(後半35分33~37秒)、柴崎は攻撃(崩し方)のイメージに力点を置きながら、しかし同時に、味方がボールを奪われた直後の守備にも的確に対応できる位置にポジションを取っています。絶妙のバランス感覚と言うべきでしょう。
そして、この柴崎の正しいポジショニングがあったからこそ、長友のパスを受けた瞬間(後半35分37秒)【図1】、彼の前には“使える”スペースが確保されています。あれだけ敵がチーム全体の重心を下げている状態では、往々にして攻め急ぐあまりMFの選手までもが敵陣のペナルティエリアに近付きすぎてしまうところですが、柴崎はそれをせず、MFとして最も確かな場所にポジションを取っていた。これがあのゴールを生んだ最大の要因でしょう。
【図1】全体が前がかりになるなか、柴崎が攻守のバランスを意識したポジショニングをとることで前方のスペースを確保。そこから本田にクサビのパスを打ち込み、ワンツーからダイレクトでシュート。見事な流れで同点ゴールを決めた
もちろん、右サイドへ展開すると敵に思わせながら、その裏をつくように縦に鋭いボールを入れた瞬間からの加速。これが、最終的に敵のMFが寄せる時間をあのシュートを放つ瞬間に奪っているのです。もちろんそこには縦パスを受けた本田の絶妙な返しもある。そして柴崎が放ったシュートの精度もまた完璧です。
以上の流れを見ただけでも、日本に「決定力」が欠けているとは思えません。むしろ、あれだけ上質なゴールを(徹底して引いて守る相手に)決めることができるチームはそう多くないと考えるべきなのではないでしょうか。
単に1試合の最終スコアだけを見て「決定力不足」と評されるのであれば、それこそ世界中の全チームが同様の批判を常に受けることになるでしょう。
次のような比較が有益か否かはともかく、たとえば先の2月17日、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦(ファーストレグ)。1-1の引き分けに終わったPSG対チェルシーで、PSGのFWイブラヒモビッチは少なくとも3度の決定機を決めることができませんでした。あの世界屈指のFWですら外すときは外すのですから、そのゴールを決める難しさを本質と捉えることがやはり、「得点力」を論ずる上で前提とされるべきでしょう。
そうした前提に立つからこそ、我々は日本が少なくとも「6-1」で勝つべき試合だったと考えるのです。(中略)
実に質の高い攻撃を連続させてみせた日本は、「6-1」で勝つべきであったにもかかわらず、しかし、結果的には前半の立ち上がりに喫した失点によって、その後の戦い方を難しくしてしまった。
先制したことでUAEが“カテナッチョもどき(=引いて守るだけ)”の守備に徹してくる中、日本には中二日による疲労がありました。これがおそらく、前述の決定機における精度を数センチの単位で狂わせてしまったと解釈できるのかもしれません。
だからこそ、あの前半7分(6分45秒)における失点は、確実に“回避可能な失点”であったからこそ、正確に分析する必要があります。
あの場面、FW乾の守備が的確であれば、失点はおろか、アシストとなった縦パスを出させることさえなかったはずなのですから。
始まりは、前半6分11秒のUAEのスローイン……(全文は『フットボール批評issue04』でお楽しみください)
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