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ダシに使われたオシム氏。元通訳が見た、代表後任監督をめぐるボスニアと日本メディアによる空砲の撃ち合いと虚報

text by 千田善 photo by Getty Images

よろしくない「関係者によれば」という書き方

 もう1つの側面としては、高度情報化時代のケースとして、ヨーロッパでの報道が瞬時に日本にも伝わり(逆もまた然り)、たとえばイタリアの新聞が「プランデッリ前監督が日本のオファーを断る」と報じれば、数時間後には日本で「イタリア紙によれば……」と出ている。

 ハリルホジッチ氏の場合は、数ある候補のカラ撃ちの中からたまたま「正解」に当たったということだが(とはいえ、実際の調印までは何が起こるかわからない)、日本とヨーロッパ(とくに地元ボスニア・ヘルツェゴビナと隣国クロアチア)の報道の具合をネットでながめてみると、双方が「日本のスポーツ紙によれば」「ボスニアの新聞によれば」と無責任な引用をくり返していることがわかる。

 ボスニアの新聞(サイト)が噂話を書くと、日本の新聞がそれを書く。「ボスニアからの情報によれば」と断っていればまだ良心的な方で、週刊誌お得意の「関係者によれば」(情報源を隠すのが本来の使用方法だが、自分の思いつき・憶測をもっともらしく記事に仕立てるための便利なフレーズでもある)という表現で書いてしまうと、どれだけ信憑性があるのかがまったく見えなくなってしまう。

 この場合、監督人事に限ったことではなく「XXだったら面白いな」というのが、ツイッターなどでまたたく間に拡散して、「面白いことにXXらしい」「XXなんだそうだ」「XXで確定」と、うっかりしているとだまされる。高速(インターネットだから光速でもある)で拡散される伝言ゲーム(電子版)は始末が悪い。

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