名将ハリルホジッチの理念とは
そのハリルホジッチがクロアチアのディナモ・ザグレブで指揮した後、アルジェリアの監督に就任するのだから数奇な話だが、そこではコートジボワールよりもさらに組織の度合いを強め、洗練されたカウンターを植え付けたのには驚かされた。もともと中盤のパスワークで崩すスタイルだったアルジェリアは、テクニカルだが攻撃のテンポが遅く、なかなかトップレベルでは通用しなかった。そこにソリッドな守備と短い時間の中でも攻撃に鋭さを出すためハードワークを選手に課した。
ブラジルW杯では惜敗したベルギー戦にはじまり、韓国戦、ロシア戦、ラウンド・オブ・16のドイツ戦と全て異なるシステムを用いたが、素早い攻守の切り替えと運動量、隙があれば縦を一気に突く研ぎ澄まされた攻撃の意識は変わらなかった。その象徴的な試合がドイツ戦であり、[5-1-3-1]というシステムをベースに、後に世界王者となるチームのリズムを崩し、何度も得点チャンスを作り出した。延長戦の末に2-1で敗れたが、極端な言い方をすればドイツの戦術ではなくGKノイアーの前に屈した試合だった。
確固たるベースと徹底した研究。その両面を兼ね備えるハリルホジッチが正式に就任すれば、日本代表に新たな刺激を与えてくれるのは間違いない。日本人はコートジボワールともアルジェリアとも身体的な特徴が違うため、そのまま当てはめることができないのは確かだが、スキルや機動力、何より献身の意識はチーム強化のメリットになりうる。そこに戦術のベースを植え付けながら、ハリルホジッチの理念でもある勝つためのこだわりや強さをどう加えていくのか。そのためにどういう選考をしていくのか。
ものごとに筋を通すプロフェッショナルとして知られるだけに、協会の交渉次第で決裂するリスクはあるが、契約がうまくまとまることを期待するとともに、妥協なき強化のための全面的なバックアップを約束してほしい。
【了】
フットボールチャンネルfacebookはこちら→
フットボールチャンネルTwitterはこちら→