新戦術において重要な役割を果たす
振り返ればレバークーゼン戦の時点で、既に「自信」は芽生え始めていたのかもしれない。シュトゥットガルト戦ではギュンドアンへの見事なヒールアシストでドイツメディアを唸らせると、次に備えるユベントスに対しては「最高の相手」と口にする。「楽しんで行きたい」と力強く言葉を残した。その端には「自信」が現れていた。
ドルトムントのチームそのものにも変化は現れている。昨夏レヴァンドフスキがバイエルンに移籍したことで、ボールの収めどころを失ったドルトムントは、前半戦を通して不安定な戦いを強いられた。代役となるはずだった、新加入のインモービレ、ラモスはCFとして機能しない。
加えてブンデスリーガの対戦相手は、ドルトムントの代名詞とも言えるゲーゲンプレッシングを研究し、その戦術を無効なものとするために引いて構えて、BVBに挑んで来た。敵の戦略は見事にハマり、ドルトムントはずるずると順位を下げて、降格圏の17位で前半戦を折り返す。
しかし今、クロップの若干の戦術変更に伴って、その状況は打開されつつある。CFにボールが収まらないことに業を煮やしたのか、シュトゥットガルト戦で顕著に観られたことだが、まずロイス、香川といった主に2列目の選手に縦パスを入れ始めた。そこから人数を掛けた速攻で、相手のDF陣を崩していく。
そうすることでチームは、ゲームの中でのリズムと勢いを取り戻しつつある。そうして2アシストを記録した後でも、「固められたときにどう崩すかという意味では課題は残っています」と香川は言うが、相手が引いて「固めて」来たからこそ生まれた戦術とも言えるのではないだろうか。
そしてその中で、ヒールアシストに象徴されるような、狭い局面で威力を発揮する技術を持つ香川が、重要な役割を果たすことは言うまでもない。ドルトムントの浮上と香川の復調は、ニワトリとタマゴのような関係なのである。