メッシのプレーは「捕まえられない」
無数の賛辞で彩られてきたメッシのキャリアについて、多少の言葉を付け加えたところでさほど意味はない。だが、テレビでは見えなくとも、実際に彼と対戦してみて分かるような小さなこともある。
まず、彼はピッチ上で何も話をすることはない。実際のところ、彼の声は一言も聞いたことがないと思う。そして、小柄な割には信じられないほど力強い選手だ。
バルセロナと対戦した試合では、彼ができるだけ自分から遠い場所でプレーしてほしいと願いながら大半の時間を過ごしていた。そう認めることは恥だとも思わない。
メッシのプレースタイルについて考える時、すぐに頭に浮かぶ言葉は「捕まえられない」というものだ。ずっと彼のことを見続けていても、まばたきをしたかと思えばもういなくなっていて、どこか別のスペースにボールを持って現れる。向かい合ってタックルを仕掛けようとする時、彼がボールを持って何をしようとするかは分かっても、問題はそれに付いて行けないことだ。
彼は常に平常心を保っている。ゴール後のパフォーマンスで度を過ぎてしまうような姿は滅多に見られないし、逆にさほど気落ちするようなこともない。私としては、選手時代の自分にも同じような性質があったと思う。
試合はすぐに変化していくものなので、何が起こっても対処できるようなメンタル状態に自分を置いておかなければならない。
オールド・トラッフォードでバルセロナを破った試合ほど、ユナイテッドが高いレベルの集中力を維持したパフォーマンスを見せたことは他になかった。あの試合でも、カンプ・ノウでのファーストレグでも、毎秒ごとに自分たちのポジショニングや相手がもたらす危険性、自分たちのチームとしての状況に注意し続けなければならなかった。
1週間の間ずっと、サー・アレックスとスタッフとともにその部分に取り組んでいた。全ての瞬間に何をすべきであるかがはっきりと分かっていた。それを2試合を通してやり通さなければならなかった。