埋められなかった興梠の穴。補強の目玉はズラタン
昨季、第31節に横浜F・マリノスに勝利してからは、1分2敗と失速し優勝を逃した浦和。2007年、鹿島アントラーズに大逆転優勝を許して以降、ラスト5試合で勝ち越したことは一度もなく、シーズン終盤の失速劇はもはや“恒例”ともなってしまった。
監督の選手起用方法、選手へのプレッシャーやメンタル面など、失速の要因はいくつか挙げられるが、昨季の最大の原因は興梠慎三の負傷離脱だろう。第30節の鹿島戦で右足腓骨を骨折し、浦和は攻撃の大黒柱を失うこととなった。
シーズンを通して体を張り、浦和の攻撃陣を牽引し続けた興梠が不在になったことで前線にボールが収まらず、攻撃のリズムが崩れて得点数は減少。12ゴールという記録だけではなく、戦術面においても欠かすことのできない選手であったことは明らかだ。
今季は、その失敗を繰り返さないためか、攻撃陣の補強がメインとなった。最大の目玉となったのは、大宮アルディージャから獲得したズラタンだ。現役のスロベニア代表FWは、興梠と1トップの座を争うことが予想されるが、昨季は李忠成をシャドウで使ったように、長身でダイレクトなプレーを得意とするズラタンをシャドウで起用することもあり得るだろう。
その他にも、清水エスパルスから高木俊幸、ベガルタ仙台から武藤雄樹、そして“またも”サンフレッチェ広島から石原直樹を獲得。新戦力4人と興梠、李で1トップ2シャドウのレギュラーポジションを争うことになる。彼らがどういうコンビネーションを見せるのか期待したい。
そして、このポジションには柏木陽介や梅崎司もいる。昨季はシャドウを主戦場としていた柏木だったが、試合の途中からボランチを務めていたように、阿部勇樹と2ボランチを組む可能性もある。守備面で若干の不安を抱えるものの、前線へより多くのパスを供給することができる。
“ミシャサッカー”で最も激しい運動量が求められる両サイドには、今季も宇賀神友弥と平川忠亮がレギュラーとなることが予想される。関口訓充がセレッソ大阪へと移籍したが、柏レイソルから橋本和を獲得し、梅崎もサイドでプレーできる。ACLとの連戦で激しい体力の消耗は必至のため、彼らの出番は必ず訪れるはずだ。
もちろん、関根貴大の存在を忘れてはならない。無観客試合となった第4節の清水戦でJリーグデビューを飾り、いきなりゴールを演出。シーズン最後の勝利となった横浜戦で値千金の決勝ゴールを挙げた19歳の新星は、浦和サポーターが今最も期待を寄せている選手だ。
サイドの守備とスタミナに難があるものの、果敢なドリブル突破と物怖じしない性格で右サイドを突破し続けた関根。まだまだミスは多いが、浦和の将来を背負うと言っても過言ではない。