「幅」の有効活用というシンプルなコンセプト
周知の通り、ベニテスはリバプール監督当時から現在に至るまでほぼ一貫して「4-2-3-1」をその基本布陣としています。そして現在、対戦相手によって(または試合の局面が変化するのに合わせて)自分たちの戦い方(戦術=システム)を変えることが半ば一般的とされるイタリアにあってもなお、ベニテスのナポリが「4-2-3-1」を変えることは皆無。したがって一部では柔軟性に欠けるとの見方もあり、のみならず「4-2-3-1原理主義者」とさえ指摘する向きもあるのですが、しかしその一方では、前述の通り、他ならぬ「4-2-3-1」のスペシャリストとして高い評価を得ている。そして、この高い評価の根拠とされるのが、まさに監督ベニテスのサッカーに一貫して見られる明確なコンセプトであり、この概念を少なくはない指導者たちが半ば教科書として研究の対象としているのです。
とはいえ、そのコンセプトは至って明瞭、シンプルなものです。つまり、ピッチの「幅」を最大限に利用する。これに尽きると言って良いのでしょう。
GKまたは最終ラインから始まる通常の組み立て。敵のCKを跳ね返すところから始まるカウンター。高い位置でボールを奪ってからのショートカウンターなど、ナポリの様々な「攻撃システム」を見れば、いずれの場合もチーム全体として最大限に「幅」を確保、活用しながら攻めていることがすぐに理解されるはずです。そして、その場合、もちろん「4-2-3-1」の「3」の両サイド(カジェホンとメルテンス)が鍵を握る存在であるのは確かとはいえ、同じシステムを採る他の多くの監督が「3」の両サイドに可能な限り外(タッチライン際)に張るよう指示するのとは異なり、ベニテスはそれを「3」の両サイド(カジェホンとメルテンス)に義務付けていません。むしろ、多くの場合で「3」の両サイド(カジェホンとメルテンス)にピッチ中央へ絞るよう求めています。当然、たとえば右のFWカジェホンが中央へ絞れば、その彼をマークすべき敵の左SH(または左SB)も中に絞らざるを得なくなるのですから、本来カジェホンがいるべき場所は空くことになる。したがって、その空いたスペースへ右SBのマッジョが入ることでナポリは、より高い位置(敵陣の深い位置)での「幅」を確保しようとする。もちろん、その空いたスペースへ右SBのマッジョが入ることで空いてしまうナポリの右SBの位置には、MF(ダヴィデ・ロペス)または右のCB(アルビオル)がスライドすることでカバーし、穴を埋めます。
ですが、以上の基本的な動き(「4-2-3-1」全体としての連動)の中で最も重要なポイントはここで言う「連動」がすべて選手の自由意志に委ねられているという点です。
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