大胆かつ柔軟なチームでインパクト残す
決勝トーナメントの1回戦は大会を優勝するドイツとの対戦になったが、振り返ればドイツを最も苦しめたチームであり、筆者の感想としては、オランダ対メキシコに匹敵するベストゲームの1つだった。
[5-1-3-1]という、あまり目にしないシステムでドイツのストロングポイントを封じ、アーリークロスから徹底してDFラインの裏を突く攻撃で、スピードに難のあるメルテザッカーと対人戦で強さを発揮するボアテンクというセンターバック・コンビを苦しめた。
ある意味で、ドイツの守護神ノイアーを覚醒させたのがハリルホジッチ率いるアルジェリアだったと言えるかもしれない。普通ならGKと1対1になっていたはずの場面で、ノイアーの迅速な飛び出しに阻まれたのだ。
またオフサイドで得点にこそならなかったが、左に流れたFWのスダニを起点に、ライン際を追い越したグーラムのクロスに、DFの死角を突いたスリマニが合わせてゴールネットを揺らしたシーンは、体格に恵まれない日本にとってもお手本の様な形だ。
最終的には延長戦で2点を決められ、1点返したものの2-1で敗れ、大会を去ることになったアルジェリアだが、ほとんど注目されない状態で大会に入りながら、ブラジルの地に確かなインパクトを残した。
ドイツ戦の見事なパフォーマンスもさることながら、対戦相手に応じてシステムを変えながら、ことごとく機能させていることは注目に値する。またコートジボワール代表の様な破壊的な攻撃サッカーを実現したと思えば、アルジェリアの様に研ぎ澄まされた堅守速攻を植え付ける。
組織としてのハードワークを理念としながら、国や選手の特徴に則したチームのベースを作り、対戦相手に応じたアレンジを加えていく。代表という準備期間の限られた環境の中で、これだけ大胆で、柔軟なチームを作り上げた監督は記憶のある限り過去のW杯までさかのぼっても、ほとんど思い当たらない。