体制側を相手に結束した彼らがもたらした変化
正直、ここまでの内容は、サッカーと政治が混ざることもなく映し出されているだけである。いったい映画のタイトルの「ユナイテッド」とはどういうことなのか? 疑問がわき始める頃、突如、ガラタサライのサポの中心メンバーが声に出すのだ。「行った方がいい。すぐに仲間を集めよう」と。そう、ここからがこの映画の素晴らしいところだ。サポーターという「ならず者」がタクシム広場に姿をみせる。ベジクタシュもガラタサライもフェネルバフチェもない。垣根を越え、3クラブのサポが自然に集結する。「ゴールを決めろ、警棒がなけりゃ、お前たちはいつもへっぴり腰だ」。警官を挑発し、エルドアン首相をこき下ろす。
彼らは別に「英雄」ではない。だが、とにかく、このシーンのサポたちはカッコいい。警察の蛮行を携帯で撮影したに違いない粒子のあらい動画や、コマ送りしているような風景も混じっている。でも彼らはカッコいい。映像のクオリティとか、ひとまずどうでもいい。タクシム広場に現われる、それぞれのクラブのシンボルカラーを身にまとったサポーターの逞しさに、涙を禁じ得ないのは、おそらく私だけではない。
そして何かが変わった。その「何か」を形容することはできないし、する必要もないのではないか。一緒になった、というわけではない。それが何なのか。映画の最後を飾るベジクタシュとガラタサライのダービーは「それ」を映している。映画を観る私たちは、「それ」を感受し、自分の「それ」として考え始めるのだ。ボールは私たちの足元にパスされている。
【了】
■「イスタンブール・ユナイテッド ―サポーター革命―」上映スケジュール
2/7(土) 11:50~ トークゲスト:木村元彦(ジャーナリスト)
2/11(水・祝) 16:25~ トークゲスト:陣野俊史(文芸評論家)
チケットはこちらから
【東京国際フットボール映画祭 公式ホームページ】
http://football-film.jp/
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