メッシの歩みを知っていても観る価値がある作品
熱心なサッカーファンなら、リオネル・メッシのこれまでの歩みや、エピソードについてすでに多くを知っていることだろう。
アルゼンチンのロサリオで生まれ、5歳の時に近所のクラブで本格的なプレーをスタート。以来、天才の名をほしいままにする。しかし、成長ホルモンの分泌異常が発覚し、成長ホルモン投与などの治療なしでは身体が発達しないと診断されてしまう。アルゼンチンのクラブは高額な治療費を工面してくれなかったため、メッシは13歳でスペインのFCバルセロナのセレクションを受け合格。家族そろってバルセロナへ移住する。この時、143cmだった身長は、成長ホルモンの投与治療によって169cmまで伸びた。そして、17歳となった2004年10月16日、第7節エスパニョール戦にてトップデビューを飾り、以降の歩みはご存じのとおりである。
そんなメッシの軌跡を描いたスポーツ・ドキュメンタリーが本編である。基本的なストーリーは、彼のこれまでの人生に即したものなので、当然、多くの方がすでに概要を知っている、いわば“ネタバレ”の状態。それでも、本編を見るべきなのは、スペインの鬼才、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の手によるものだからだ。
1993年に映画『ハイル・ミュタンテ!/電撃XX作戦』で長編映画監督デビューした彼は、2010年の映画『気狂いピエロの決闘』でヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞と脚本賞を受賞。2014年には『スガラムルディの魔女』でゴヤ賞最多8部門を受賞し、スペイン国内で70万人以上の観客動員を記録している。芸術性と娯楽性を兼ね備え、商業的にも成功しているスペインを代表する映画監督なのだ。
奇想天外なストーリーと映像がイグレシア映画の特徴で、ピカソやダリなど一筋縄ではいかない同国の天才芸術家の系譜を受け継いでいるといっても過言ではない。日本ではまだそれほど有名ではないが、昨年10月に『スガラムルディの魔女』PRのために来日し、同作と2012年の作品『刺さった男』が同時公開されるなど、日本での注目度も上がっている。