スペインでは身近なイスラム世界
開催国オーストラリアの優勝で幕を閉じたアジアカップは、欧州的観点からは殆どニュースになっていないが、イラクでアジアカップを見ていた少年達13名がサラフィー・ジハード主義者のテロによって殺害された事件は、静かに波紋を投げ掛けている。
シャリーア(イスラム法)を冒涜したという理由で、両親もその場にいる状態で、機関銃で銃殺された少年達の遺体は、その場に放置されたと報道されている。同じように殺害されることを恐れた両親が名乗り出ることができなかったからだ。
スポーツ、この場合はサッカーを言い訳に、殺人が正当化されることなどあってはならないと声を大にしても、現実は理想どおりに動かない。日本では、イスラム過激派と表現されることが多いこのサラフィー・ジハード派は、最近20年ほどで台頭してきた勢力であり、非暴力的な厳格派、元々のサラフィー派とは似ているようで全く非なる存在だ。
こういった事件は心痛極まりないが、今後一般のイスラム諸国とテロ組織「イスラム国」を混合するようなことがないことを願っている。ここスペインでは、イスラム世界は非常に身近な存在なのだ。実際、現在のスペインリーグにもムスリムの選手は多いし、これはヨーロッパ全体に見受けられる傾向だ。
カンプノウスタジアムには、過去にないほど、アラブ系の観光客が訪れるようになったし、ムスリム独特の服を身につけた女性の姿も観客席に頻繁に見られるようになった。イラクなど、女性がサッカースタジアムに足を踏み入れることすら、禁じている国があるのだから、女性がスタジアムに足を運んだところで法律に触れない国で、観光を楽しみたいと考えるのに何の不思議もないだろう。