日本を封じたUAEの戦術
試合後、失点に結び付く相手のアーリークロスに詰め切れなかった乾貴士が「最初の10分間は全体的にふわっと入ってしまった」と語った。もちろん選手たちの中に見えない油断があった可能性は否定できないが、UAEのスカウティングと違う形に攻守がはまらなかったとも言える。
前半7分にリードを奪ったあとは[4-2-3-1]に戻し、O・アブドゥラフマンをいつものトップ下に配置し、守備の負担を軽減する代わりに、カウンターの起点として前残りをさせ、日本の攻撃時も長谷部誠がポジションを上げられない様にしていた。
さらに驚かされたのが[4-2-3-1]の1トップにターゲットマンのハリルではなく、先制点をあげた快足FWのマブフートを残し、ハリルには左ウィングで縦のボールを受ける役割を担わせたことだ。1トップに快足FWマブーフトを残したのは、引き続き裏を取る動きを繰り返すことで、DFラインの位置を下げ、ビルドアップからの攻撃の距離感を悪くさせるため。もちろん、カウンターから追加点を狙う意図もあったはずだが、主に守備面での効果が高かった。
しかも、立ち上がりは左サイドにいたアル・ハマディを右に移し、徹底して長友に付かせた。このアル・ハマディという選手は本来の主力ではないが、フィジカルが非常に強く、攻守にハードワークできるという他のアタッカーにない持ち味がある。アリ監督は攻撃力に勝る日本に対抗するための刺客として彼を起用したのだろう。
ここから日本がようやく同点ゴールを決める後半36分まで、日本が多くのチャンスを作りながらゴールに見放されて続けた様にも映るが、UAE側の視点に立って見れば、その時間帯で完全に崩されたのは2つぐらい。
その他は中東でオマーン代表の守護神アル・ハブシに次ぐ実力者とされるGKナセルが十分に対応できるシチュエーションでのシュートだった。