「言葉を発するためのエネルギーがかなり必要」
今季セリエAが始まる前に自身の課題を明確にし、前向きに取り組むことでゴールという結果を出した本田とは異なり、長友は新シーズンが始まっても迷い苦しんでいた。
インテルでシーズン開幕当初、ドドーの加入で左サイドの定位置を追われ、右サイドでのプレーを余儀なくされたことも、割り切れない思いを増幅させたのかもしれない。
2018年ロシアW杯に挑戦することは決心したものの、自分は一体、何を突き詰めていけばいいのか…。それを考えれば考えるほど、答えが分からなくなっていく自分がどこかにいたのではないか。
その胸の内が如実に分かるシーンが、22日の会見にあった。筆者が「ブラジルで何が足りないと感じ、ロシアに向けて何を成長させようとしているのか。それを踏まえてUAE戦を含めた今大会では何をテーマに取り組んでいるのか?」という質問をしたところ、かつて誰よりも饒舌だった男が30秒ほど黙り込んでしまったのだ。
困惑の様子を目の当たりにしたアギーレ監督が自分に対して受けた「長友の評価」について「私が先に答えましょう」と助け船を出し、「佑都は戦うことのできる力強い選手であり、他の選手たちに愛され、敬意を払われています。
右でも左でもプレーでき、リズムを作り、意欲を見せる選手ですので、それは他の選手たちに伝染します。また、明るい性格がグループにいい影響を与えていると思います」と絶賛した。が、その高評価を聞いても長友の表情は決して緩まなかった。
そして「さっきの時間でいろいろ考えていましたが、なかなか、W杯の時の心境と、次のW杯に向けての心境を語るっていうのは、ホントに難しくて、今、そのことについて考えていて、言葉を発するためのエネルギーがかなり必要かなと思うので、ちょっとここでは勘弁してもらいたいなと。
そのエネルギーを使うくらいなら、明日の試合のダッシュ1本にエネルギーを使いたいと思います」と言葉を絞り出すのが精一杯だったのだ。