「一枚の写真に彼のキャリアが詰まっている」
イタリアの多くのクラブは長い歴史を誇り、選手や監督、オーナーとともにそれぞれが独自のキャラクターを築き上げてきた。もちろん地元のサポーターやメディアもその一翼を担っていると言える。
数十年を経て、勝利や敗北、喜びと悲しみがイタリアの社会経済史と混ざり合いながら、多様性あるセリエAを作り出した。
たとえば、今季のセリエA第18節で印象的な出来事があった。1926年に設立された歴史あるローマの象徴、フランチェスコ・トッティが、ゴール後に私物のスマートホンでセルフィーを撮影したのだ。
これは歴史的瞬間だった。“エル・カピターノ”はラツィオとのローマ・ダービーで歴代最多となる通算11ゴール目を挙げ、2ゴールで引き分けに持ち込んだ。
この偉業は“クルヴァ・スッド”(客席の中で最も熱狂的なサポーターが集まる区画)の前で行われた。トッティは「みんなにとって特別な瞬間の記録だ」と語った。あのセルフィーは彼とローマファン“一族”にとってスペシャルな出来事だった。
あのセルフィーは人目を引くための行動だったにもかかわらず、世界中で称えられ、全く批判されていない。ルールに従えばイエローカードが提示されるはずだが、主審のダニエレ・オルサートはそれを黙認した。UEFAも公式HPで「一枚の写真に彼のキャリアが詰まっている」とあの一瞬を大きく取り上げた。
何と奇妙な現象だろう。指摘する点があるとすれば、トッティのゴールは決勝点ではなかった。美しく、チームを救った重要なゴールではあったが、直後に首位ユベントスはナポリを破り、2位ローマとの勝ち点差を3に拡げた。
65分にトッティのゴールが生まれてから、あのパフォーマンスを行ない、試合が再開されるまで2分15秒もかかった。驚くべき長さだ。この場面で失った時間の一部はアディショナルタイムに追加されたが、勝利のために3点目を目指すローマにとっては明らかに無駄な時間だった。