ルワンダ全人口の10~20%が消えた大虐殺
1994年4月6日、ハビャリマナ大統領の乗った飛行機がルワンダの首都キガリ上空で爆破されてから数時間後、国内全域で大虐殺が始まった。ツチ族とフツ族穏健派が、フツ族過激派に片端から襲われて殺されるというジェノサイド(集団的大虐殺)は100日間あまり続いた。犠牲者数は80万人から100万人と推定され、たった3ヶ月あまりでルワンダ全人口の10~20%が消えた。国外に逃亡した人たちも多く、ツチ族だけでなく、報復を恐れたフツ族の人たちも多くが難民となった。国内から成年男子の姿がほぼ消え、ルワンダは大げさでなく国としての存続も危うかった。
大虐殺から20年がたった今、ルワンダは復興の道を歩んでいる。そこでルワンダ国民が最も熱い関心を寄せるサッカーを通して、虐殺について、また部族間融和について、人々の本音に迫ったドキュメンタリーが「FCルワンダ」である。
サッカー選手、軍人、ジャーナリストたちのインタビューをはさんで、ルワンダの今を伝える映像が流れる。通りには人があふれ、笑顔がこぼれ、子どもたちは土ぼこりをあげながらストリートサッカーに興じている。虐殺の悲惨さは、一見したところあまり感じられない。
インタビューでも人々は口を揃えて言う。「今ではツチとかフツとかいう言葉を出す人さえいない。私たちは皆、ルワンダ人なんだ」。APR(ルワンダ愛国戦線チーム)所属のサッカー選手は強調する。「チーム内で出身部族をあきらかにすることはない。我々はチームとして一つにまとまっている」
だが中には、自身の家族に起こった悲劇について語るAPRの選手もいる。母がツチ族で父がフツ族だった家庭を、ある日フツ族過激派が襲った。父がカネを渡してなんとか追い払おうとしたが、結局妹と弟が連れて行かれるのを彼は隠れ場所からそっと見送るしかなかった……そんな悲劇を、彼は感情を押し殺した顔で淡々と語る。平板な口調や無表情であるためにいっそう、20年前の怒りや悲しみが今も消えていないどころか強まっていることが読み取れる。