混乱を招いた契約問題
米国のニューヨーク・シティが、2年契約でのフランク・ランパード獲得を発表したのは昨年7月。しかし、3月からのMLS初参戦に向けたプレシーズンも始まる今年1月になっても、ランパードはマンチェスター・シティでプレーしている。しかも、シティが単独で保有権を持つ選手として。
プレミアリーグの今季開幕を前に決まったシティ入りは、NYシティからのレンタル移籍のはずだった。期間は昨年末までと理解されていた。両クラブが公式サイトでそう発表していたのだ。大晦日の夜にシティ残留が決まった際も、クラブは「契約延長」を公表しただけだった。
ところが、米国サイドから非難の声が上がる中、国内でもリーグがシティに事実確認を求めたところ、1月第2週後半には、レンタル契約の延長ではなく、「選手契約の継続」がランパード残留の実態だと判明した。リーグからは「両クラブ間に契約は存在しない」事実が伝えられ、シティも「レンタル移籍」とした当初の発表を誤りと認める声明が出した。
NYシティがランパードと交わした契約は、選手登録上は拘束力のない仮契約。“正式”に選手契約を結んだシティは、年末までの短期契約だったとしているが、メディアでも言われているように、これは1年契約に年末の中途解約を可能にする条項が含まれていたと考えるのが妥当だ。
さもなければ、1年間を選手契約の最低期間と定めるリーグ規約に反する。解約条項を否定するシティの姿勢と、NYシティと揃ってレンタル移籍で押し通した過去半年間の態度は解せないが、両クラブを所有する『シティ・フットボール・グループ』の上層部が、ランパードを巡る複数のケアレスミスを取り繕おうとしたのかもしれない。いずれにしろ、リーグはルール違反なしと判断している。